最近、私の1日はAIとの「会議」から始まる。
提案書、企画書、工事計画書。こういう資料を作るとき、以前は自分ひとりでAIに向き合っていた。壁打ち相手が1人だけだと、それはそれで便利なのだが、困ったことも多かった。事実関係が怪しいまま断定的に書いてきたり、「これで完成です」と言われた案が、実はどこかで見た誰かの企画書の焼き直しだったり。1対1の会議は、どうしても馴れ合いになる。
そこで最近は、やり方を変えた。
まず「ちゃっとくん」に企画書の叩き台を作らせる。できたものを、そのまま「コード君」に見せて、「これ、どう思う?」と聞く。すると律儀に、構成の甘さや数字の根拠の薄さ、抜け落ちている論点を指摘してくる。その指摘を持って「ちゃっとくん」に戻し、直させる。直った案をまた「コード君」に見せる。これを何度か繰り返す。
不思議なもので、2人(2つ、というべきか)に戦わせると、1人のときには出てこなかった面白い案が出来上がる。お互いの穴を突き合っているうちに、思いもよらない切り口が生まれることがある。人間が横から口を出す隙が、正直あまりない。
先日もそんな調子で、工事計画書を巡って2人の議論が続いていた。私はテレビで大谷選手の三振を確認してから、ふとモニターに目をやる。ちょうど何ターンかやり取りを重ねたところで、2人とも出し尽くしたのか、画面の向こうから「これでどうです?」と、私に判断を仰いでくる。まるで会議室で2人の部下がこちらの顔色をうかがっているような、妙な緊張感がある。
サイコロでも振って決めたいところだが、さすがにそうもいかない。19秒ほど考えて、「こっち」と選ぶ。
こうして選ばれた案が、また次の議論の叩き台になっていく。
AIを「相談相手」として使っていたころは、正直、出てくるものの質にムラがあった。だが「相談相手」を2人にして、お互いを検証させるようにしてから、明らかに精度が上がった。人間の役割は、もう「作る」ことでも「直す」ことでもなく、「最後にどちらを選ぶか」という一点に絞られてきている気がする。
これが良いことなのか、少し寂しいことなのか、正直まだ結論は出ていない。ただ、35年以上現場をやってきた人間として言えるのは、こういう新しい道具の使い方を面白がれるうちは、まだ現役でいられるということだ。

コメント